シイタケの栽培方法は、主に「菌床栽培」と「原木栽培」の2種類に分けられます。

いわゆる野生キノコの状態が原木栽培に近く、木の幹から生えている様子はイメージしやすい方も多いのではないでしょうか。

一方、人工的にキノコを育てる手法が菌床栽培で、現在はこちらの栽培方法が主流です。

今回は菌床栽培の概要やメリット・デメリットを解説します。

菌床栽培について

シイタケの菌床栽培(きんしょうさいばい)について、以下の観点から詳しく解説します。

  1.  菌床栽培とは
  2.  菌床栽培の歴史
  3.  栽培環境

菌床栽培とは

菌床栽培とは、オガクズに米ぬかなどの栄養を混ぜて固めた培地でキノコを育てる手法です。

  • オガクズ:木材を切る際にでる細かい木くずのこと。
  • 米ぬか:米の外皮。精米する際にはがれて粉になったもののこと。
  • 培地:細胞や微生物が成長しやすいよう人工的に作られた環境のこと。

キノコの栽培は菌床栽培のほかに「原木栽培(げんぼくさいばい)」もあります。

原木栽培とは、原木のなかの「木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)」を用いてキノコを栽培する手法です。

ドリルで穴をあけて、そこの種菌を植え付けて林の中などの自然環境できのこを発生させます。

野生に近い栽培方法ではあるものの、一定数のキノコを栽培するためには重い原木を何本も管理しなくてはならず、手間のかかる手法です。

そのため、現在は菌床栽培を採用している農家が圧倒的に多いです。

 

こちらの別記事では原木シイタケと菌床シイタケの違いを詳しく解説しております。

栽培する方法によって香りや食感が異なりますので気になる方は合わせてご覧ください。

原木シイタケと菌床シイタケの違いと特徴について解説

 

菌床栽培の歴史

菌床栽培の歴史は70年ほどで、1955年の後半頃から普及したといわれています。

しかし当初はエノキダケやなめこが主流で、シイタケの菌床栽培は1985年頃から普及しました。

その後、国内のシイタケ生産量における菌床栽培の割合は増加をたどり、2000年代には約52%、2013年には89%となっています。

菌床栽培を扱う農家が増えた理由には、作業が簡略化できる点や品質が安定することなどがあげられます。

栽培環境

菌床栽培において重要なのは 「光」「温湿度」「二酸化炭素」の3つの要素です。

主に室内(ビニールハウスやクリーンルーム)で栽培し、安定した環境を保つことでよい品質のキノコが育成できます。

ビニールハウス内は温度や湿度を適切に保たなくてはならないため、冷暖房ができる設備が必要になります。

そのほかにもエアーシャワーや紫外線殺菌灯などによる、害虫・外菌への対策も必須です。

 

菌床栽培のメリット

菌床栽培のメリットは主に以下の3点です。

  • 原木栽培に比べ収穫までの期間が短い
  • 1年を通じて収穫ができる
  • 原木栽培では難しいきのこも栽培可能

原木栽培に比べ収穫までの期間が短い

原木栽培と菌床栽培の収穫までの期間は以下が目安です。

  • 菌床栽培の栽培期間:約3か月~1年
  • 原木栽培の栽培期間:約2~3年

シイタケを原木栽培する場合、原木全体に菌を行きわたらせるための準備期間が必要で、この下準備を「伏せ込み」と呼びます。

原木栽培の場合はおおよそ1年半程度の時間を要するため、すぐに収穫することはできません。

収穫までの時間が長くなると人件費がかさみ、利益率が低くなってしまいます。

 

1年を通じて収穫ができる

菌床栽培は室内で育成するため、1年を通じて収穫を行うことが可能です。

そのためには空調設備が必要となりますが、コンスタントに収穫できるメリットは非常に大きいです。

原木栽培の場合は、基本的に春と秋しか収穫できません。

 

原木栽培では難しいきのこも栽培可能

菌床栽培では、安定した室内環境で栽培を行えるため、さまざまなキノコを育てられます。

たとえば、マッシュルームやキヌガサダケなど、原木栽培では難しいキノコも菌床栽培であれば育てられるのです。

そのほかにも、トリュフや松茸などの高級キノコを菌床栽培で育てる研究・開発も進められています。

 

菌床栽培のデメリット

菌床栽培のデメリットは以下の2点です。

  • 初期投資・設備維持に費用がかかる
  • シイタケの香りが劣る

 

初期投資・設備維持に費用がかかる

菌床栽培を始めるには、適切な場所と環境を整える必要があります。

  • ビニールハウス(クリーンハウス)
  • 空調
  • 換気設備
  • 滅菌のための設備

これらを準備するための初期費用と、維持費として毎月の光熱費がかかります。

しかし、農業のなかでは比較的コンパクトに始められる業態ではあるので、初めての方でも取り組みやすいともいえるでしょう。

 

シイタケの香りが劣る

菌床栽培のシイタケは、原木栽培のものに比べて香りが劣るといわれています。

香りの感じ方は主観的なものではありますが、自然環境で栽培される原木栽培のシイタケに根強い人気があるのも事実です。

できるだけ天然の香りや味を感じたい人は、原木栽培のシイタケを選ぶこともあるでしょう。

 

原木栽培のシイタケは希少価値がある!

約80%以上が菌床栽培を採用しているなか、フルタヤ椎茸では100%国産の原木シイタケを取り扱っています(スライス椎茸に関しては菌床椎茸の利便性から、菌床スライス椎茸を取り扱っています)。

明治30年に創業したフルタヤ椎茸では、創業以来ずっと原木栽培にこだわったシイタケを栽培してきました。

品質にこだわり、上質な干しシイタケを豊富なラインナップで販売しているのが特長です。

ぜひ一度、原木栽培で育った香り豊かなシイタケをお試しください。